大キライだった秋のお話③

イベント・アクティビティ
スポンサーリンク
スポンサーリンク

大キライだった秋のお話②

 

ぎんなんを拾って持って帰ってきてね、

という母の頼みを断れないのにはわけがあり

 

それは、私の大好きな父の

大好物の茶碗蒸しに

私の拾ってきた ぎんなんが入るからでした。

 

小さな女の子の隠れた苦労の末、

食卓に並んだ茶碗蒸しは

 

椀のふたをカコッと開けて覗きこむと

おだしの香りの湯気で顔がすこし湿り、

 

あんなに臭かったぎんなんは綺麗なミドリ色をして、

自分が臭かったことなんて忘れたように

すっかり茶碗蒸しの一部になっているのです。

 

そんな姿が憎たらしくて、少し苦いのをがまんして

残さず全部口に放りこんでいました。

 

大人になり、お店のメニューなどで見かけるそのたび、

このぎんなんは誰が拾ってくれたものなのだろうかと

臭くて嫌だった、今となっては懐かしい日を思い出すのです。

 

 

つづく!

コメント

  1. […] 大キライだった秋のお話③ […]

スポンサーリンク